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​> 限定承認について

1 限定承認とは

相続によって得たプラスの財産の限度においてのみ被相続人の債務を弁済するということとして相続の承認をする手続です。

遺産をもって負債を弁済した後、余りが出ればそれを相続できます。

2 限定承認の適用場面

限定承認は、①プラスの財産はあるものの、負債(マイナスの財産)の全容が不明で、どちらが多いか不明であるときなどに使われます。

また、②債務超過であることは分かっているが、自宅不動産などの特定の財産をどうしても相続したいときにも使われます。相続人に先買権がありますので、例えば被相続人の不動産の持分の鑑定人の評価が500万円であるときは、相続人は500万円を支払って被相続人の不動産の持分を取得することができます。

3 限定承認の申述手続き

原則として「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」の熟慮期間内に手続きをしなければなりません。

限定承認は、相続人全員で足並みを揃えて申述する必要があります。(注)

​(注)相続放棄をした人は相続人ではなかったものとみなされるのでそれ以外の共同相続人全員で申述することになります。 

4 限定承認の利用状況

一見すると良い制度のように見えますが、手続きは複雑を極め、時間もかかります。

また、不動産について原則として競売が必要となることや、譲渡所得税が発生することがある等の理由から、ほとんど利用されていません。

 

令和元年度の司法統計では、限定承認の新受件数は全国で657件しかありません。(1年間の死者を約130万人として、2000件に1件のレアケースということになります。)

5 限定承認後の手続き

共同相続人がいるときは共同相続人のうちの1人が相続財産管理人に選任されますが(民法936条)、相続財産管理人は、選任後10日以内に、一定期間内に請求の申出をするよう官報公告(除斥公告)を行います。

また、この時点ですでに判明している債権者に対しては、別途、個別に請求申出を催告しなければなりません。上記の申出期間は最低2カ月です(民法927条)。

申出期間が満了すると、相続財産管理人は、相続財産を管理しつつ、それぞを順次換価して、債権者に弁済を行います。すべての債権者に対して全額支払いきれないときは、債権額に応じて按分弁済を行い、残余財産があれば、共同相続人間で遺産分割を行います。

しかし、不動産等の売却可能な財産があると原則として競売をしなければいけませんので、とにかく手続きが複雑です。不動産がある場合には、限定承認は申立をしてから手続きが終わるまでに1年から2年かかることも珍しくありません。

なお、弁護士費用を相続財産から支出することはできないと考えられています。

6 譲渡所得税について

税務面の複雑さもあります。

限定承認をした場合、相続の時点で被相続人に被相続人が相続財産を時価で売却した収入があったとみなす結果(所得税法59条)、被相続人に譲渡所得が発生して所得税が課税されるので、相続人は被相続人の所得税について相続開始を知った日から4か月以内に準確定申告をして所得税を納付しなければなりません。(ただし、相続財産の中から支払えば良いということにはなります。)

最終的にプラスが生じたときは、別途、相続税もかかる場合があります。(譲渡所得課税額は相続債務として差し引けるほか、相続税の基礎控除は使えます。)

弊所では限定承認の経験もございます。お困りの際は弁護士にご相談ください。

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